【EEI】【DLab⁺】食の進化ワークショップ「未来と肉?」を開催しました
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食の進化イニシアチブ/DLab⁺が「もしも:まちと未来の実験室」オープニングウィーク記念イベントとして、ワークショップ「未来と肉?」を開催しました
2025年11月21日に竹内昌治教授(東京大学大学院情報理工学系研究科)をお招きして、技術がもたらす新しい食(eat)がどのようなものになるのかを議論しました。この日は未来社会創成研究院の新たな拠点「もしも:まちと未来の実験室」の開所日でもあり、出来立ての場の中で活発な意見交換が行われました。

今回のワークショップでは「未来と肉?」という題で竹内教授から講演をいただきました。近年、動物の体外で細胞を増やしてつくる培養肉が注目を集めています。竹内研究室はマイクロ・ナノデバイス技術を先導してきた研究室で、技術を応用した培養肉の研究でも有名です。
講演では、最初に培養肉が必要とされている背景が説明されました。
増え続ける人口に対してタンパク質を十分に供給することや、地域で食料を安定的に供給すること、また感染症の危険性や動物福祉といった課題に対応するために従来の畜産以外の肉の生産方法が検討されています。培養肉はその1つの方策として期待されています。シンガポールではすでに培養鶏肉が商品化され小売店でも入手できるようになっていますが、培養した細胞の含有割合は低く、実質は大豆肉に近い現状があります。
そうした中、竹内研究室では「本物のお肉」の作成を目指しています。本物のお肉――すなわち筋繊維が整っている構造肉を再生医療の知見や技術を活用して作るもので、その作り方について分かりやすく説明されました。竹内研究室ではシートを積み重ねて細胞を育てていくデバイスと方法を考案しており、三次元の組織を作っていることが大きな特徴です。この方法を用いると、本物に近いお肉――電気刺激で動くような筋肉を作れる強みがあるとのことでした。2019年に1センチメートル角の培養ステーキ肉を発表し、2022年には実際に食べることもできました。竹内教授は、テレビ放送で実際に培養肉を試食した際の印象を聞かれた際に、感動はしたもののあまり美味しくなく、良いコメントができなかったというエピソードも披露されました。
講演では今後培養肉を広めていくための課題も言及されました。技術を改良していくことに加えて、規制の整備や新しい食文化の創出が必要になります。
講演の最後には、肉にとどまらない技術の展望が示されました。竹内教授の構想によると、未来のロボットは筋肉で動くようになります。人間っぽいロボット――人間の皮膚と同じ素材で覆われたロボットも登場するだろうとのことでした。生物と機械が結びついたバイオハイブリッドロボットができることによって、さまざまな可能性が広がります。たとえば、美味しい、「食べられる」ロボットがトコトコと歩いてきて人間に食べてもらえる――そんな未来の構想も示されました。

竹内教授のトークに対して、多くの質問が寄せられました。たとえば、「培養肉や食べられるロボットの開発にはコストがかかるという評価もあるときに、こうした技術の意味をどのように考えるか」、「人間の方がサイボーグになる可能性はあるのか」、「どこまで、どのような機能を付けることができて、それが形態とどのようにつながるのか」「ハイブリッドロボットに菌が棲むことはできるのか」といった技術の背景についての興味深い質問がありました。
休憩をはさんだ後のディスカッションの時間でも引き続き質疑応答が展開されました。たとえば、「培養肉を作る際の細胞が増えていくという現象は、ほかのどのような現象と類似しているといえるか」、「テクノロジーによって欲望が今後どうなるかが興味深い。ご自身(竹内教授)が作った筋肉を持つロボットに対してどのような感情を抱いているのか。またこれは人々の欲望をどのように変えていくだろうか」、「3Dフードプリンターのようなテクノロジーも登場している。先端テクノロジーでしかできないような食品とは何か」といった質問は、技術のもつ特性や、それが社会にもたらす影響の議論につながっていきました。

ディスカッションの途中、高尾隆教授(東京科学大学リベラルアーツ研究教育院)と高尾ゼミの学生さんによって「食べられるロボット」をモチーフにしたインプロ(即興劇)が披露され、場はおおいに盛り上がりました。インプロでは、台本がなく、演者がその場でアドリブで劇を進行します。――食べるものが無くなってしまった世界でロボットが「私を食べてください」と人間に申し出る。人間は「いや、いいです、大丈夫です」と最初は断るが、ロボットは「食べなければ死んでしまいますよ」と人間を説得する。人間は躊躇いつつ、「でもどうやって食べますか?」とロボットに問いかける――(インプロの途中までの概要)。竹内教授は、まさに自分が考えていたような場面・ストーリーだと感嘆されていました。
インプロの物語も引き金となり、食べられるロボットは、何が問題なのかが議論されました。人という形態が忌避される可能性や、生から死へ移り変わる瞬間が重要であるという指摘、また、ロボットがインタラクションを通じて単なる物質ではなくなることの事例にも言及がありました。参加者により自作の小説も披露されました。
今回のワークショップでは、「食べる」という活動をとりまく論点の広がりを確認していくことが目的でしたが、講演とディスカッションを通じて、非常に興味深い論点を浮かび上がらせることができました。