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【ELSI】一般的な全核酸塩基を高効率にリン酸化する万能酵素を発見

2026.02.04
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― 太古のエネルギー源からメッセンジャーRNAを安価に創る手法の開発 ―

東京科学大学(Science Tokyo)生命理工学院 生命理工学系の松本龍征大学院生、同大学 未来社会創成研究院 地球生命研究所の渡邉貴嘉元博士研究員、リアム・ロンゴ(Liam M. Longo)特任准教授、松浦友亮教授らの研究チームは、8種類の一般的なヌクレオチドを単一の酵素で、ポリリン酸を供与基質としてヌクレオシド三リン酸(NTP)に高効率で変換する手法を開発しました。ポリリン酸は、その構造や調製の容易さから太古の生命システムのエネルギー源であったと考えられています。

NTPは生命反応を支える基幹分子であり、その安価かつ効率的な合成法の開発は細胞外人工代謝による物質生産や創薬応用の発展に不可欠です。酵素を用いた物質生産は、グリーンテクノロジーとして、よく知られています。一方で、一般的な酵素法でNTP($1095/mmol)を安価なヌクレオシド一リン酸(NMP:$78/mmol)から生成するには、異なる6種類もの酵素が必要であること、高価なリン酸供与体(>$37/mmol)が必要であることから、その利用は大きく制限されてきました。

本研究チームが発見したMangrovibacterium marinum 由来のポリリン酸キナーゼ2(MAN)は、古代の酵素が備えていたとされる幅広い基質特異性を有することを解明しました。この幅広い基質特異性を利用し、単一酵素で安価なNMPとポリリン酸 ($0.016/mmol)からNTPを合成し、これを用いてワンポットでメッセンジャーRNAを作れることを示しました。本研究は、メッセンジャーRNAワクチン合成を含めた、NTPを原料とする細胞外人工代謝経路を用いたバイオものづくりに大きな変革をもたらす可能性があります。

本成果は、1月8日付(現地時間)の「Nature Communications」誌に掲載されました。

Ryusei Matsumoto, Takayoshi Watanabe, Eishin Yamazaki, Ako Kagawa, Liam M. Longo and Tomoaki Matsuura. A universal polyphosphate kinase powers in vitro transcription. Nature Communications. DOI:10.1038/s41467-025-68012-9

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