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【ELSI】数億年を隔てた酵母が、なぜ同じ「毒」を使うのか

2026.07.23
  • Social Phase Transition
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  • 論文

― 「新参者殺し」戦略が安定して進化する条件を理論的に解明 ―

 

 ELSIの畠山哲央准教授と、東京女子大学 現代教養学部 情報数理科学科の小田有沙特別客員准教授らの国際共同研究チームは、約3億〜6億年前に分岐した出芽酵母と分裂酵母という異なる酵母が、同じ「新参者殺し(Latecomer killing)[1]」の仕組みを共有しているという進化上の謎に取り組みました。

研究チームは、「毒素を作り毒に適応する細胞(新参者殺し細胞)」、「毒素を作らず耐性もない細胞」、「毒素を作らず耐性だけを持つ細胞」の競争を記述する数理モデルを構築し、理論的に解析を行いました。その結果、栄養豊富な環境または飢餓環境のどちらか一方が続く場合には、新参者殺しは進化的に安定しないのに対し、長い栄養豊富期と短い飢餓期が繰り返される環境では、この仕組みが進化的に安定して維持されることを明らかにしました。

さらに、出芽酵母に比較的近縁な2種では新参者殺しが確認されず、この仕組みの保存や喪失が、単純な系統関係だけでは説明できないことも示されました。本成果は、生物の祖先が経験した環境変動が、分子システムや適応戦略を数億年にわたって保存したり、反対に喪失させたりする可能性を示すものです。
本成果は、2026年7⽉22⽇(現地時間)に英国王立協会が刊行する学術誌「Journal of the Royal Society Interface」に掲載されました。

Tetsuhiro S. Hatakeyama, Kunihiko Kaneko, Kunihiro Ohta and Arisa H. Oda. Evolvability of the toxin-adaptation system in yeast J R Soc Interface DOI: 10.1098/rsif.2026.0345

プレスリリースの全文は、こちらのページをご覧ください。

未来社会創成研究院地球生命研究所(ELSI)については、こちらのページをご覧ください。

[1] 酵母がグルコース飢餓に陥った際に、自らと同じ遺伝情報を持つ細胞さえ殺す自己毒素を放出する戦略。先に飢餓環境を経験した細胞は、毒素を放出すると同時に自らの状態を変化させ、毒素に適応する。一方、後から来た未適応の細胞は、先住細胞と遺伝的に同一のクローンであっても毒素によって排除される。